【前編】フィンテックで急成長中の「ペイトナー」が18日間で資金調達を実現できた理由

公開日:2022年10月5日
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「スモールビジネスにやさしい支払い・請求で新しい挑戦を後押しする」というミッションを掲げ、フリーランスなどのお金や請求管理の課題を解決するサービスを提供しているペイトナー株式会社
同社は2022年3月、Siiibo証券が運営するプラットフォーム「Siiibo」を活用し、オンラインでの私募による社債を発行、18日間という短期間で資金調達を実現しました。

最短10分で請求書を現金化するオンライン型ファクタリングサービス『ペイトナー ファクタリング』を主軸にフィンテック業界で成長し続ける同社が、なぜ社債による資金調達を行なったのか。ペイトナー株式会社CFOの林 峻人氏を迎え、その具体的な背景やデット調達のメリット、ベンチャー企業の資金調達手法の多角化はどうあるべきかなど、Siiibo証券株式会社代表 小村 和輝がお話を伺いました。

ペイトナー株式会社 CFO 林 峻人様

お話を伺った方:
ペイトナー株式会社 Chief Financial Officer 林 峻人様

スモールビジネスに新しい挑戦を! 資金繰り課題の解決に邁進するペイトナー株式会社

小村:はじめに、御社の事業概要を教えてください。

林:弊社は「スモールビジネスにやさしい支払い・請求で新しい挑戦を後押しする」というミッションを元に、個人事業主、フリーランスの方に特化したファクタリングサービス『ペイトナー ファクタリング』をメインにサービスを展開しています。主軸の『ペイトナー ファクタリング』の強みは何といっても、圧倒的な手続きの容易さと審査の早さ。もちろん「利用者と我々ペイトナー」の二者間でお金・連絡のやり取りがオンライン上ですべて完結できるサービスとなっていますので、利用状況を取引先に知られることはありません。

利用にあたっては、「申し込みから着金まで最短10分」そして「サービス手数料10%」という、審査の早さとわかりやすい料金体系も相まって、累計申込件数は40,000件を突破、直近月次の売上高は前年同期の3倍超となっています。『ペイトナー ファクタリング』が単なるファクタリングサービスとしてではなく、スモールビジネスにかかわる方々が資金繰りに悩む時間を、付加価値を作り出す時間に変える“資金繰り支援サービス”として、利用者の方々の支持を得ている形です。

小村:前年同期の3倍はすごいですね! 2022年9月には新たに『ペイトナー 請求書』というクラウド型の請求書管理サービスもリリースされましたよね。

林:はい。このサービス誕生のきっかけは弊社代表・阪井が学生時代に町工場でアルバイトをしていた経験に端を発しています。阪井はそこで資金繰り問題、月末月初に重くのしかかる請求書の管理や支払いに苦労をしている中小事業者、スモールビジネスの方の悩みを間近で見て、「この課題を何とかしたい」と弊社を創業しました。

まずは資金繰り解決としての『ペイトナー ファクタリング』、そして請求業務の負担軽減に貢献するための『ペイトナー 請求書』といったところでスモールビジネスの方々の悩みに寄り添えたら、と考えています。まだ収益の柱としては、ファクタリング事業がしばらく続くような形になるかと思いますが、引き続きスモールビジネスに携わる人々がより働きやすい社会環境の実現を目指し、サービス向上に努めてまいります。

ペイトナー株式会社 CFO 林様

個人投資家のニーズを探る、社債発行プラットフォーム「Siiibo」だから利用を決めた!

小村:掲げられているミッションを具現化するプロダクトを次々リリースされていますが、資金確保は重要ですよね。その中で社債発行に関心を持たれた背景を教えていただけますか。

林:おっしゃる通り、「スモールビジネスにやさしい支払い・請求で新しい挑戦を後押しする」というミッションを掲げる当社にとって、資金ニーズや調達コストはミッション達成に直結する大きな課題のひとつになっていました。というのも、弊社はファクタリングサービスを提供している関係上、かなりお金が出入りするビジネスモデル。事業拡大に伴い運転資金確保の必要性も増す中で、社内では様々な資金調達手段を比較検討していました

小村:そういった中で、Siiibo証券でのオンラインによる私募(有価証券の取得勧誘者を50名未満とすること)で社債発行を決めた理由は何だったのでしょうか。

林:投資家と企業のマッチングプラットフォーム「Siiibo」が決め手ですね。「Siiibo」では、個人投資家のリクエストも参考にしながら、社債発行の条件を決めていくことができますよね。サービスの性質上お金の出入りが多く、ファクタリング事業のGMV(流通取引総額)が直近急速に拡大していることもあり、プロパー融資で賄うのも限界があります。もしかすると、「Siiibo」のプラットフォームを利用すれば、個人投資家の方々の潜在的ニーズを探れるかもしれないと考えたのです。

小村:利用してからの率直なご感想を教えてください。

林:当初の狙い通り、社債発行での資金調達、そして個人投資家の方のニーズを探ることができとても満足しています。嬉しいことに、今回の社債発行では募集開始からわずか18日という期間で資金を調達することができました。この調達が実現できたのは「Siiibo」プラットフォーム上で限定公開できるIR情報が大きな要因だと考えています。

「Siiibo」でIR情報として公開した、弊社の創業から3年での多数のスモールビジネス支援実績や、今後の事業計画――。我々の事業への想いが、多くの個人投資家の方に響いたからこそだと実感しています。個人投資家の皆さまからのご支援は弊社にとって、とても励みになるものです。

小村:ありがとうございます。IR情報を公開し、直接投資家の方々と繋がることができる「Siiibo」だからこそのメリットに着目していただき、とても光栄ですね。弊社としても、御社の事業に共感し応援いただける投資家の方をおつなぎすることができたことはとても嬉しく思っております。

対談風景

“収益性の高さ”と“将来の返済原資”を意識したIR情報づくり

小村:投資家の方に対する情報公開のポイントについて、いろいろお伺いしたのですが、「Siiibo」で達成される融資はいわゆるデットファイナンス(以下、デット)になりますよね。エクイティファイナンス(以下、エクイティ)とは違う形でIR情報を発信するにあたり、特に留意されていた点などがありましたら教えてください。

林:実のところ、IR情報発信の内容はエクイティの場合と大きく変わることはなかったのですが、我々としてはエクイティとデットのバランスを考えながら調達することが非常に重要であるとの認識で動いていました。その点を踏まえ、投資の意思決定をいただく上で気を付けていたことは2つあります。

1つ目には非常に収益性が高いビジネスモデルであること、2つ目には財務基盤が健全であること。デットという面では、前者の財務基盤に関する情報を特に留意しましたね。
投資家の方々にとっての懸念点は“将来の返済原資がきちんと担保できるのか”ということなので、その不安を払しょくできるようなIR情報づくりに注力しました。

小村:プレスリリースを出してから、反響はありましたでしょうか?

林:正直、反響は想像以上にありました。知人からも「是非『Siiibo』を紹介してほしい!」という連絡をいただきました。

今、“ベンチャーデット”が賑わいを見せていますが、その賑わいは裏返せばエクイティが厳しいということ。そんな環境の今、どうしてもデットに頼らざるを得ない場合ももちろんあると思いますが、今後デットはさらに価値として上がってくるのではないかな、と思っていますね

小村:“ベンチャーデット”という文脈での登壇は、確かに記者の皆さんからの注目度も高いです。我々のスコープはもちろんベンチャーだけではないのですが、時流をおさえてベンチャーにフォーカスしていきたいという想いはありますね。

林:「Siiibo」は、発行条件や資金使途を柔軟に設計でき、自由度のある調達手法です。我々も資金使途を見据えた適切な調達手段の選択が広がったことに感謝しております。

弊社では資金使途をエクイティとデットで、ある程度分けているのですが今回調達した資金は、顧客基盤を拡大のため、認知系の広告施策、直近で会員が取れているYouTube等SNS媒体での広告投資に活用する予定です。

小村:御社の場合、今回の調達資金を広告宣伝費に限定されていましたものね。デットでの調達はユニットエコノミクス化できている中での資本投下、そして蓋然性が高く見込める資金使途が最適だと思いますし、私自身、デットの調達とは御社のような調達であるべきだなと改めて実感しました。


▼当記事の続きは、
『【後編】ベンチャーの資金調達に選択肢を!今、「ベンチャーデット」が熱い!』
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