エンジェル投資とは?メリット・デメリットや投資家になるために知っておきたいこと

公開日:2023年8月17日
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エンジェル投資とは創業期のベンチャー企業などに出資すること

エンジェル投資とは、主にシード期といわれる創業期のベンチャー企業に対して直接投資することです。

エンジェル投資家は、ほとんどのベンチャーキャピタル(VC)よりも早い段階で、株式や新株予約権(エンジェル投資に用いられるものは、特にコンバーティブルエクイティと呼ばれます)などを取得し、株式上場や吸収合併(M&A)が行われる際に売買差益(キャピタルゲイン)を得ることを目的としています。売買差益による高いリターンが期待できますが、同時に投資判断が難しく、投資先企業の倒産といったリスクも伴います。

また、経営経験を持つエンジェル投資家は、ベンチャー企業への資金提供のみならず、起業経験や経営知識の共有も行う場合も多いため、投資家と企業が密接で長期的な関係性を築くこともあります。

エンジェル投資への関心は年々高まっており、2022年5月時点では、エンジェル税制の適用受けた投資額が前年比で約40%増加し、120億円を超えています。

参考:エンジェル税制の実績(投資額・企業数)|中小企業庁

エンジェル投資で得られる株式とは

エンジェル投資家はシード期ベンチャー企業への出資の見返りとして、普通株式や、優先株式コンバーティブルエクイティ型新株予約権を付与されます。

優先株式とは一般的に、普通株式よりも優先的な地位が得られる種類株式を指します。エンジェル投資をはじめとするベンチャー投資に用いられる優先株式で最も一般的なものは、残余財産を優先して分配される権利がついたものです。
投資家にとっては、普通株式よりもアップサイドが大きく、企業にとっては普通株式と比較して高い株価で発行できることから、同じ金額を調達するために払い出す株数を抑えることができ、希薄化防止につながるという利点があります。
このことから、近年のスタートアップによる資金調達では、優先株式が用いられるケースが多くなっています。

一方、コンバーティブルエクイティ型新株予約権とは、将来的に株式への転換が可能な権利(新株予約権)のうち、特に株式への転換価額を後決めできるもののことです。
スタートアップ企業にとっては、調達時の大きな負担とされる企業価値評価(バリュエーション)を先送りにできることや、手続きが簡素であることから、株式による資金調達と比べ迅速に調達できる点にメリットがあります。
コンバーティブルエクイティ型新株予約権は、米国のシード期資金調達では以前から積極的に利用されていますが、日本では、国内法規制に適合した雛形パッケージとして知られる「J-KISS型新株予約権」が無償公開された2019年以降になってから、徐々に利用が拡大しつつあります。

いずれかの方法で株式を取得したエンジェル投資家は、投資先ベンチャー企業が株式上場やM&Aに成功した際に、リターンとして譲渡益を得ることができます。

参考:「コンバーティブル投資手段」活用ガイドライン|経済産業省

エンジェル投資家になるためにはどうすれば良いのか

エンジェル投資を行うためにはまず、投資先となるベンチャー企業を見つける必要があります。投資先候補の企業と出会うには、以下のような方法が考えられます。

  • 友人・知人からの紹介
  • 起業イベントやベンチャー企業交流会への参加
  • ベンチャー起業家との直接コンタクト
  • マッチングサービスの活用
  • 株式型クラウドファンディングサービスの活用

日本のベンチャー界隈はまだまだ狭い世界のため、知り合いの起業家や経営者に創業期のベンチャー企業を紹介してもらうことや、イベントでのネットワーク作りが挙げられます。
また、自身の企業に関して積極的な情報発信を行う起業家への直接コンタクトや、起業家と投資家をマッチングするサービスの活用も効率的です。
少額からのエンジェル投資を検討している場合は、株式型クラウドファンディングのサービスを利用することも出来ます。

後述のとおりベンチャー投資はハイリスク・ハイリターンのため、継続的にエンジェル投資家として活動するためには、十分な投資資金、ベンチャー企業の実績見極め、起業家とのネットワーク構築などが重要になります。

エンジェル投資をするメリット

エンジェル投資には大きなリターンを期待できるだけでなく、起業家と協力して成長に貢献し、税制上のメリットも享受できるという魅力があります。これらのメリットについてそれぞれ解説します。

高いリターンが期待できる

エンジェル投資では、ベンチャー企業の創業期に投資するという特性から、低い株価でベンチャー企業の株式を取得することが可能です。
その後、出資した企業が事業成長や株価上昇を果たした末に、株式公開やM&Aを迎えると、大きなリターンを得る可能性があります。

投資先企業の成長に貢献できる

エンジェル投資家は、資金提供を行う以外にも、自身の経営経験や知識を活かして投資先企業の成長を支援することができます。起業家と密接な関係を築きながら、アドバイスやネットワークの提供などを通じ、投資先企業の社会に対する貢献度向上や新たなビジネス機会創出の手助けとなる存在と言えます。

エンジェル税制を受けられる可能性

スタートアップ支援が広がりをみせる日本において、エンジェル投資は重要なリスクマネーの供給源として注目されており、エンジェル投資をより活性化させるべくエンジェル税制の見直しが行われています。

エンジェル税制とは、一定の要件を満たすベンチャー企業に株式投資を行った金額が、課税対象となる所得金額から控除される、株式譲渡益から控除されるなどの税制優遇のことです。なお、株式売却時に損失が発生した場合も優遇措置があります。

2022年5月時点で、エンジェル税制を受けた投資家の数は延べ1万人を超えています。
エンジェル投資を行う際には、エンジェル税制が適用されるかどうかを確認するのが良いでしょう。

エンジェル投資をするデメリット

エンジェル投資は投資家にとって魅力的な面がある一方で、デメリットも存在します。
「投資リスクの高さ」「企業選定や投資可否の見極めの難しさ」「リターンを得るまでには長期的な視点が必要」の3点を詳しく説明します。

リスクが高い

成長を期待し、エンジェル投資を行った出資先企業が、計画通りに収益を生み出せず、失敗するケースもあります。その場合、出資金が失われるリスクは念頭に置く必要があります。

特に中小企業であるベンチャー企業は、不景気などの外部要因に対する耐性も弱い場合があります。そのため、エンジェル投資を行う際には慎重な企業選定とリスク管理が欠かせません。

企業選定や投資可否の見極めが難しい

成長途中のベンチャー企業における実績や評価は、限られたものにとどまります。そのため、ベンチャー企業の成否を見極めることは、様々な実績や多くの情報が開示されている成熟企業と比べ難しいと言えます。

上記から、エンジェル投資家にとって重要なのは、経営陣と密なコミュニケーションを築き、企業のビジョンや経営方針、事業計画などの情報を収集することです。

さらに、エンジェル投資家は自身の専門知識や経験も活用し、企業の事業モデルや市場競争力、成長ポテンシャルなどを評価したうえで投資可否を決める必要があります。

リターンを得るまでに時間がかかる

ベンチャー企業が継続的・安定的な利益を上げるまでには時間がかかり、株式上場やM&Aの実現まで長い道のりとなることがあります。そのため、株式上場やM&Aを見据えた投資では、ある程度の長期的な視点をもつことが必要です。

以上で紹介したエンジェル投資のメリット・デメリットを整理すると、下表のようになります。

メリット デメリット
高いリターンが期待できる リスクが高い
投資先企業の成長に貢献できる 企業選定や投資可否の見極めが難しい
エンジェル税制を受けられる可能性 リターンを得るまでに時間がかかる

ハイリスク・ハイリターンのエンジェル投資は十分な情報収集の上、余裕資金で活用を

エンジェル投資は、投資家にとっては高いリターンを期待できる手法として、ベンチャー企業にとっては資金調達手段として機能しており、制度面でもエンジェル投資を促進するために見直しが行われています。そのため、投資家とベンチャー企業が相互の利益を追求しながら、エンジェル投資がますます活性化し、ひいては日本経済の成長に貢献していくことが期待されます。
エンジェル投資を活用するには、メリットとデメリットの両方を理解した上で、自身の資金状況、リスク許容度を考慮することが重要です。

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