社債発行の特徴とは?公募と私募の違いや費用、発行までの流れ

公開日:2022年10月28日
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米国を始めとする各国で金融引き締め政策による金利上昇が続き、資金調達の悪化が懸念されています。企業にとっては、資金調達の選択肢を増やし、柔軟な資本戦略を練ることが重要です。

数ある資金調達方法の中で、社債の発行は、上場企業が大規模な調達で活用する場合や、中小企業や成長段階にあるベンチャー企業が活用する場合もあります。
今回の記事では、社債発行のメリットやデメリット、発行の流れについて解説します。

社債発行は資金調達手段のひとつ

企業の事業活動を円滑に行うためには、設備や雇用に十分に投資できるほどの資金が必要です。企業が資金を調達する方法はさまざまですが、エクイティファイナンス(資本性の資金調達)と、デットファイナンス(負債性の資金調達)で分けることができます。
エクイティファイナンスとして「新株発行」、デットファイナンスとして「銀行借入」や「社債発行」などがあります。

この3つの資金調達手段は、「直接金融」と「間接金融」という観点から区分することも可能です。直接金融は投資家から直接融資を受けること間接金融は銀行などの第三者が間に入り、融資を受けることを指します。新株発行と社債発行は直接金融、金融機関からの借入は間接金融に当たります。

それでは、この3つの資金調達方法の特徴を以下で紹介します。

金融機関からの借入

借入とは金融機関から資金を借入れることを指します。融資元としてまず思いつくのは銀行ですが、他にも信用金庫や日本政策金融公庫などから融資を受けることも可能です。
特に日本政策金融公庫は「新創業融資制度」を設けており、起業前や起業後間もない時期でも融資を受けやすいという特徴があります。しかし、メガバンクなど大きな銀行から融資を受ける場合には、ある程度の信用力、担保力がなくてはなりません。

株式発行

株式を発行し、投資家に売却することで資金を調達する方法です。株式によって得た資金は企業のエクイティ(資本)となります。負債ではないため、返済義務のない点が大きなメリットです。
一方、株式を保有している株主は持ち分に応じて経営権を持つため、株主の意見によって経営方針を変えざるを得なくなる場合がある点はデメリットといえます。

社債発行

社債を発行して投資家に売却することで資金を調達する方法です。株式とは異なり、投資家から「借入」を受けたという形になるため、投資家に対して定期的に利息を支払い、満期時には元金を償還しなくてはなりません。

社債は借入であるという点は「金融機関からの融資」と、また直接金融であるという点は「新株発行」と似た性質を持ちます。

それでは、さまざまな資金調達手段の中で、社債発行はどのようなメリット・デメリットを持つのでしょうか。
次項からは、社債発行の種類や特徴、発行するための方法、社債の可能性について解説していきます。

社債の特徴と発行のメリット

まずは、社債の特徴と発行することで企業にどのようなメリットがあるのかを、他の資金調達方法と比較しながら解説していきます。

発行時からコストが確定している

社債は償還時期と利息を設定したうえで発行します。基本的に、発行に関する手数料や書類作成費用、定期的に投資家に支払う利息以外のコストは生じません。そのため発行時からコストが確定しており、資金計画が立てやすいというメリットがあります。

満期日には元本の償還が必要

先述の通り、社債は借入金であり満期日には全額を償還しなくてはなりませんが、逆に考えると、満期日までは返済の必要がないということでもあり、一般的には毎月定められた額を返済していく金融機関からの借入と比較した際、満期一括償還の社債を発行することにより、満期である償還日までは元本の返済が無いことになります。

負債として扱われる

株式発行で得た資金はエクイティ(資本)となりますが、社債は発行することで投資家から借入を行うものであるため、負債として扱われます。そのため、投資家に支払う利金は経費計上が可能です。

株式発行と比較するとコストが安い

社債は株式発行のようなエクイティ調達よりも比較的低コストで発行可能です。
先述の通り、株式発行には返済義務がないため、コストは発生しないように感じられます。しかし、株式を発行して資金を調達した場合、それを維持するためには株主の要求に応えなくてはなりません。このように、株式発行で調達した資金にかかるコストを「株主資本コスト」といいます。
株主資本コストは少なくとも株主が期待する収益率分だけかかると言えるため、特に成長が著しい企業にとっては、大きなコストが発生していることになるのです。
一方、社債発行で生じるコストは投資家に支払う利息(負債コスト)等に留まります。そのため、株式発行と比較すると一般的には低コストで資金調達が可能と言われます。

経営権への影響がない

先ほどご紹介したとおり、株式の場合は、株主の保有株数に応じて企業の経営に意見する権利(議決権)を持ちます。そのため経営の意思決定にも影響を及ぼします。
それに対し、社債はあくまで借入であり、議決権は付与されません。そのため経営権の分散は起こりません。

社債の発行に必要な費用とデメリット

社債発行は比較的低コストとはいえ、条件によっては株式発行や金融機関からの融資より効率が悪い場合もあります。社債発行を検討する際には、費用対効果を検証して、他の資金調達方法と比較することが重要です。
それでは、社債発行に必要な費用とデメリットについて紹介します。

返済義務がある

先述の通り、社債には返済義務があります。
株式発行であれば調達した資金は「資本」として扱われるため、返済の必要はありません。また、金融機関からの融資であれば、業績が悪化している場合には交渉して返済を遅らせることも可能です。
それに対して社債は、償還日に返済をしなくてはなりません。万が一償還ができない場合は、デフォルト(債務不履行)となってしまいます。

投資家への利金が主なコストである

社債の主なコストとして挙げられるのが、投資家に対する利金の支払いです。債券の金利は市場金利を参考に、発行者の信用度と発行時の条項内容、償還期間などを加味して決定されます。
信用度が高ければそれだけ元本が毀損することなく償還される可能性が高いと見なされることから、金利は低くなります。また、償還期間に関しては、短期の方が長期より低い金利になるのが一般的です。

発行手数料がかかる

社債は発行方法によっては手数料がかかる点は押さえておきましょう。
発行時に必要となる手数料とは、銀行や証券会社に発行に関する事務手続きを委託するための手数料が挙げられます。
社債を実際に発行する場合、発行企業が直接、発行手続き・募集を行う方法であれば、この手数料はかかりませんが、投資家に対して、債券を購入してもらうための知識やインフラがないと難しいため、仲介会社を通じて投資家の募集を募るという間接発行の方法が行われています。

発行方法により異なる社債の種類

社債を「発行方法」という観点から分けると、以下の3種類になります。

  • 公募社債
  • 適格機関投資家向け私募(プロ私募)
  • 少人数私募社債

企業の規模などによって、活用できる発行方法が違うことを次から解説します。

公募と私募の違いとは

社債は募集の人数や対象によって、「公募」と「私募」の2種類に大別されます。
公募社債は不特定多数の投資家に対し、広く募集をかけることが可能です。
情報開示等の制約から発行できる企業が限られています。一般的には格付けを取得している企業が対象です。

それに対し、私募社債は人数または対象とする投資家を限定して募集を行います。

社債の公募債とは?の記事も参照してください。

2種類の私募の違いとは

投資家を限定して発行する「私募」は、さらに2種類に分けることができます。
適格機関投資家(証券会社や銀行など)を対象とした「プロ私募」、50人未満に限定して募集を行う「少人数私募社債」です。
少人数私募債は、発行者の取引先や親族、従業員を主な勧誘対象とすることが多かったことから「縁故債」とも呼ばれます。

発行時の手続きと発行までの流れ~少人数私募社債を例に~

公募債と比べて少額での発行ができ、償還期間や金利などを柔軟に設計することも可能な少人数私募社債ですが、発行するためには、金融商品取引法や会社法に則った厳正な手続きが必要です。
ここでは少人数私募社債を例に社債発行時の手続きと発行までの流れについて解説します。

募集要項と事業計画の準備

まずは募集要項と事業計画を準備します。

【募集要項】
社債発行を行う際には、募集要項を定める必要があります。募集要項とは社債に関するさまざまな情報を記載したものです。投資家はこの募集要項を参考にして、投資を行うかどうかを判断します。
募集要項には会社法に則り、以下のような項目を掲載する必要があります。

  • 社債の総額
  • 社債の金額
  • 社債の利率
  • 社債の償還の方法及び期限
  • 利息支払いの方法及び期限
  • 社債の払込金額
  • 社債と引換えにする金銭の払込みの期日

【事業計画】
投資家に対して経営情報を開示するための資料です。会社法上必ずしも必要なものではありませんが、投資家に対する適切な情報開示を行うことで投資判断が下しやすくなります。

取締役会での決議

社債の発行は会社の運営上重要な事項であることから、取締役会の承認を得る必要があります。取締役会を設置していない場合は株主総会で決議し、株主の過半数による承認を得なくてはなりません。

募集開始と投資家からの申込み

少人数私募社債の場合、49人以下の対象者を選定した上で募集を開始し、投資家には、募集要項や事業計画書等の投資判断に必要な情報を提供します。
投資家は会社から提供された情報等を元に申込みを判断します。

社債の割当てと払込み

申込者が決まった後、社債の割当てを行います。例えば、申込総額が社債の総額を上回った場合は、一人当たりの割当額を調整する場合も発生します。
その後、投資家は募集要項に定められたとおりの払込期日までに社債購入金の払込みを行います。

社債によるコーポレートファイナンスの可能性

本記事では社債発行の特徴や社債の発行方法による違い、発行までの流れを解説しました。

社債は負債性調達のため、エクイティファイナンスとは違い、社債権者が経営権を持つことはありません。また、金利や年限なども柔軟に設定した上で発行を行うことが可能です。

資金調達方法は複数ありますが、必要とする資金額や企業の規模・成長段階によって、複数の資金調達方法を組み合わせることで、コーポレートファイナンスを最適化できるでしょう。
資金調達の多様性を高める手段のひとつとして、社債発行を検討してみてはいかがでしょうか。

>>ベンチャーデットに社債を活用する方法についてはこちら

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