社債投資のメリット・デメリット~種類別の違いや実例を元に解説~

公開日:2022年9月12日
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社債とは企業が借入を行うために発行する債券のこと

国や自治体、企業などが、インフラの整備や設備投資、新規事業開発などで資金が必要になったときの調達方法のひとつとして、債券があります。

債券の中でも、企業が発行するものを「社債」といいます。
投資家は社債と引き換えに企業にお金を貸し、企業は償還日までに決められた利子を支払い、償還日に元本を返済します。

社債は「借用証書」であるとともに、他人に売却することができ、購入した人は権利を譲り受けることから「有価証券」のひとつでもあるのです。

社債のメリット

社債を発行する企業としては、銀行からの借り入れと違い「返済方法(タイミングや分割)をある程度自由に決められる」「資金の使い道が自由」といったメリットがあります。
また、「経営権に影響しない」「株式が希薄化しない」というような点は、株式にはないメリットといえるでしょう。
では投資家からみて社債にはどのようなメリットがあるのでしょうか。

①決まった期間で元本が返ってくる

社債は借用証書であると前で述べたとおり、「元本が戻ってくる」点がメリットです。

決まった期間で決まった利息を受け取りながら、満期を迎えると元本も返済されるため、購入前から利益の計算ができ、計画的な投資を行いやすい金融商品です。

株式は、時に激しい値動きとなることで、大きなリターンを得られる場合もありますが、一方で大きなリスクも覚悟しなくてはなりません。
その点、社債は値動きこそ比較的小さいものの、満期まで債務不履行(デフォルト)さえ起こらずに保有し続ければ、市場価格が大幅に下がったとしても資産を減らすことはありません。

②国債や預金に比べて利率が高い

社債の利率は、一般的に国債などの公共債や銀行の預金より高くなります。

なぜならば、国債の発行体である国と、社債の発行体である企業のリスクを比較した場合、ほとんどのケースで国債の方が安全であると考えられるからです。国債と比べてリスクがある分、社債の利率は高くなることが一般的です。

ちなみに、国債の利率は、基準金利から一定の利率を差し引くのですが、それでも金利の下限は0.05%と決められています。
また、大手銀行の定期預金金利は0.002%ですから、国債の利率の方が10倍以上高く、社債の利率は前述の通り国債の利率より更に高いということになります。

※参考:日本銀行金融機構局「預金種類別店頭表示金利の平均年利率等について」

社債のデメリット

では、社債のデメリットを見てみましょう。
企業側からすると社債の発行は「発行手続きのコストや手間がかかる」「返済期日をリスケジュールできない」という点がデメリットといえるでしょう。

投資家からみたデメリットは以下のポイントです。

①企業が倒産すると元本が満額返ってこないリスク

投資家にとって社債のデメリットは、発行体である企業が倒産した場合、貸したお金が100%返ってくるとは限らないという点です。

そのため、社債の購入前には企業や発行条件について調べ、デフォルトの可能性を推し量る必要があります。社債の安全性を判断する材料として「財務諸表」や上場企業であれば「株式」の値動きが参考になります。

また、格付けも社債の安全性を判断する指標になります。
ただし、格付けは発行体が格付け会社にお金を払って取得していることから、公平性に課題があるという指摘もあります。

②投資するためにまとまったお金が必要

その他の社債投資のデメリットとしては、比較的大きな資金が必要である点が挙げられます。

社債はほとんどの場合、最低購入単位が1億円ほどであるため、おもに機関投資家向けとされていました。
このことから、社債市場の9割ほどを機関投資家が占め、個人投資家はごく少数です。

小口化した「個人向け社債」でも最低購入単位は10万円から100万円程度で、株式のような少額投資は比較的難しいといえます。

社債の種類によるメリットの違い

社債には普通社債の他に、性質(債券か株式か)の違いや担保の有無、格付けの違い、募集方法の違い、デリバティブの有無などによって、さまざまな種類に分かれます。
社債の種類によって、メリット・デメリットも異なってくるため、事前に把握しておく必要があります。

性質が異なる社債

社債には、株式に換えることができるものや、弁済順位の差による種類があります。

株式に転換できる「転換社債」

「転換社債型新株予約権付社債」(Convertible Bond: 略称CB)は、一般に転換社債と呼ばれます。
転換社債は、普通社債の特徴である定期的な利払いや償還日における元本の返済はそのままに、新株予約権が付いている社債です。

発行時に決められた一定の条件で社債を株式に転換することができる権利、すなわち新株予約権が付いていますが、株式に転換せずに社債として保有し続けることも可能です。なお、一度新株予約権を行使した転換社債は、償還日が到来しても元本は受け取れません。

一定の値段で株式を購入できる権利のついた「ワラント債」

ワラント債は、決められた一定の金額で発行体の株式を買える権利「ワラント」(= 新株予約権)が付いた社債のことで、新株引受権付社債とも呼ばれています。

転換社債との違いは、ワラント債の場合株式の購入には別途費用が必要になる点です。一方、ワラント債では権利行使後も社債は手元に残るため、引き続き利払いや償還を受けることができます。

元本と利息の支払いの順位が低い「劣後債」

劣後債とは債券と株式両方の特性を持つハイブリッド証券のひとつで、普通社債よりも法的弁済順位が低い債券のことです。
弁済順位では株式に近いことから、債務不履行(デフォルト)などのリスクを考慮し、普通社債と比べると高い利率が付されます。

また、金融機関が発行する劣後債は、一定の制限の中で、自己資本比率規制のルールにおいて資本金に算入できる点で、発行体側にもメリットがあります。

担保の有無が異なる社債

社債は担保の有無の違いにより、担保付社債と無担保社債に分類することもできます。

担保が付いた「電力債」

電力債は、担保付社債の代表例で、電力会社が発行します。
担保付社債は、発行体の全財産から優先して弁済を受ける権利が付いた社債です。

電力会社のようなインフラ整備事業者は、多額の資金を必要としていることが多く、比較的低い利率で調達しなければなりません。そのため一般的な社債より利率を低く設定する代わりに、担保を付けることで投資家のリスクを下げています。

格付けが異なる社債

社債は格付けによっても分類することができます。

格付けとは、債券や発行体の信用力を示す指標で、格付け会社によって評価されます。格付けが低いほどデフォルトに陥る可能性が高くなる一方で、高いものほどリスクが低く、信用力が高いとされています。

社債は格付けによっても分類することができます。

利回りは高いがリスクの大きい「ジャンク債」

ジャンク債とは、デフォルトの可能性が比較的高い債券のことです。最近では米国FRB(連邦準備制度理事会)が購入したことが話題となりました。

信用力が低いため利回りが高く、債券としてはハイリスク・ハイリターンです。

一般的にBB(ダブルビー)格以下に格付けされている債券はジャンク債に分類されます。なお、BBB(トリプルビー)格以上に格付けされている債券は、投資適格債と呼ばれます。

募集方法が異なる社債

社債の募集の方法には、公募と私募の2種類があります。広く一般に募集する社債は公募債ですが、私募の形で限定的に募集されることもあります。

限られた投資家だけに募集をする「私募債」

私募とは、不特定多数に販売する公募と異なり、限られた対象にだけ募集を行う方法です。具体的には、50人未満の投資家に対する募集(少人数私募)、または適格機関投資家のみに対する募集(プロ私募)を指します。

私募によって発行される社債を私募債と呼び、公募債と比べ発行プロセスが簡略化・管理コストが軽減されています。
私募の対象となった投資家は、自分たちだけに募集される社債を購入する機会が得られます。

なお、銀行に設計や発行手続きを依頼する場合は、銀行が単独で元利金の支払いを保証する「銀行保証付私募債」や、銀行と信用保証協会が共同で保証する「信用保証協会保証付私募債」といった形で発行されることもあります。この場合、発行企業は、投資家への利息に加えて銀行への手数料の支払いも必要になります。

デリバティブを利用した社債

社債とは債券のうち企業が発行体となるものを指しますが、デリバティブ(金融派生商品)を組合せることによって、社債にはないリスク・リターンの特性を持たせています。

特別な構造を持つ「仕組債」

仕組債は、デリバティブ(いわゆる「仕組み」)を利用して、通常の社債よりも金利を高く設計した社債です。

一方で、条件次第で大きく元本割れする可能性もある特殊な債券で、元本が減るかどうかを左右する条件は、仕組債ごとに設定されています。

EB債(他社株転換可能債)やリンク債(株価指数連動債)と呼ばれる形で発行されることが多く、これらは仕組債の発行企業とは無関係の個別株や株価指数の値動きによって、損益が決まります。

分類上は社債であるものの、実態はハイリスク・ハイリターンの金融商品です。
最近ではトラブルが相次いでいることから、販売にあたっての規制が強化されることになっています。

発行事例と社債発行の新たなメリット

ここからは最近発行された社債のなかでも、特徴的なトヨタ自動車とオリエンタルランドの社債について解説します。

①トヨタ自動車

2021年3月にトヨタ自動車株式会社は「Woven Planet債」と名付けられた社債を、最大発行額1,000億円・償還期間5年、利率0.10%の条件で募集しました。
募集前には、近い時期に発行された普通社債や電力債と比べても利率が低かったことから、購入不振に繋がるのではと考えられていました。

しかし、結果は「ほぼ完売」、その理由は調達資金の使用使途によるところが大きいと考えられます。
トヨタ自動車はこの社債で調達した資金をSDGsに使うとしています。
SDGsとは17の世界的目標と169のターゲットおよび232の指標からなる国際的な開発目標です。

すなわち、Woven Planet債を購入した投資家はSDGsに貢献したことになるわけです。
これは社債投資のメリットが収益の追及だけでなく、社会貢献にも意義を見出した良い例になるのではないでしょうか。

※参考:トヨタ自動車株式会社 ニュースリリース

②オリエンタルランド

株式会社オリエンタルランドは定期的に社債発行を行っている企業の一つで、2022年5月現在、償還を控えている社債の発行額は2,300億円に上ります。

同社はテーマパークの拡充を定期的に行うことで増収増益を維持し、利益を設備投資に充てるといったキャッシュフローを維持してきました。
しかし、新型コロナウイルスの感染拡大防止による休園で減益が続く中、社債の発行で手元資金を厚くする考えです。

なお、同社は社債発行だけでなく銀行融資も活用しており、2020年にはメガバンクを含む金融機関から総計2,000億円の融資枠(コミットメントライン)を獲得しています。

2022年1月発行の無担保社債(機関投資家向け)は、償還期間3年、利率0.04%という発行体に有利な条件でしたが、コミットメントラインを含めた同社の信用力の高さや、非常事態でも引き続き強いブランド力を反映して、リスク分散目線を含めた投資家を集め、順調に資金を調達しています。

※参考:株式会社オリエンタルランド 国内無担保普通社債発行について

社債のメリット・デメリットを把握して資産運用に活用を

本記事では社債投資一般のメリット・デメリットに加え、社債の種類によって異なる部分についてもご説明しました。
また、具体的な発行事例を元に、新たなトレンドを反映したメリットにも触れました。
社債の特徴を様々な側面からご理解いただき、資産運用に役立ててみてはいかがでしょうか。

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