債券投資における利回りと利率の違いや投資時の確認事項を解説

公開日:2022年10月7日
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「販売中の債券の条件を見ていたら、『利率』と『利回り』の両方が表示されている。2つの値が大きく違っているものもあるが、どういうことだろうか」
このような疑問をお持ちの方に、この記事では次のことを解説します。

  • 利回りと利率の違い
  • 債券に投資する際に確認すべき点5つ

債券に対して、定期的に利息が支払われる、償還されると額面金額が戻ってくる、など株式よりもリスクが低い金融商品というイメージを持つ方も多いと思います。
一方で、仕組債のように、必ずしも条件がシンプルではなく、ハイリスクな商品が存在しているのも実状です。
この記事では、利回りをはじめ債券の条件に関する基本的なポイントをまとめて紹介します。

利回りと利率は異なる

まず、利回りとは、利息や売買損益など合計収益の、投資した元本に占める割合を年単位で示したものです。債券における売買損益には、満期まで待って償還を受ける場合の「償還差益・償還差損」と、途中で売る場合の「売却益・売却損」が含まれます。

利回り(%)=(利息合計+売買損益)÷運用年数÷購入価格×100

一方で利率とは、利息の合計を額面金額に占める割合で示したものです。

利率(%)=(利息合計÷額面金額)×100

債券の購入では、利率より利回りで判断することが大切です。
ただし、外債の場合は為替変動リスクがあるため、現地通貨建てで高利回りに見えても、利息や償還金を円で受取る場合に、必ずしも期待通りの利回りが得られるとは限らない点に注意が必要です。

利回りとは投資した金額に対する年間収益の割合

利回りについて理解を深めるために、例として、「年利3%、額面金額100万円」の債券を額面金額で購入した場合を考えます。
上記で解説した計算式を今回のケースに当てはめて計算できます。

まず1年あたりの利息は、額面金額100万円×利率3%=3万円です。
この債券を、5年後に98万円で売却した場合、

((3万円+(98万円ー100万円)÷5年)÷100万円)×100=2.60%

したがって1年あたりの収益は、額面金額100万円x利回り2.60%=2万6千円になります。

もし同じ債券を5年後に101万円で売却した場合は、

((3万円+(101万円ー100万円)÷5年)÷100万円)×100=3.20%

このとき1年あたりの収益は、額面金額100万円x利回り3.20%=3万2千円と計算できます。

なお、より正確に計算する場合は上記に加えて税金や手数料なども計算に入れます

債券に投資する際の確認事項を解説

ここからは債券を購入するときに確認していただきたい点を5つ紹介します。
債券には株式とは異なる金融商品としての特性があります。
債券の商品性を理解しておくことは、リスクの正確な把握に役立ちますので、ぜひ覚えておきましょう。

①保有期間

債券の市場価格は、金利を始めとしたさまざまな要因で日々変動しています。
たとえば、金利が上がると債券の市場価格は下がり、金利が下がると市場価格は上がります

債券を満期まで保有する場合は、額面金額が返済されるため、市場価格の影響は受けません
一方で満期前に売却する場合、タイミングによっては、購入時より低い価格になり利回りを下げてしまいかねません

債券を購入する際は、償還までの期間を元に、自分はどの程度市場価格の変動を見極められるか、またどの程度の元本割れまで許容できるのかを事前に考慮しておきましょう。難しいと感じる場合は、償還日まで保有し続けることを前提に購入することをおすすめします。

②格付け

格付けとは、格付け会社が債券や発行体の元利金の支払い能力の確実性などを総合的に分析し、信用力をランク付けしたものです。
各格付け会社が予め定めた基準に基づいて評価を付与していることから、投資判断の参考になります。

格付けと利回りの関係として、格付けの高い債券は一般的に利回りが低く、格付けの低い債券は一般的に利回りが高くなります

ただし、格付けはデフォルトに陥ること、あるいは陥らないことを保証するものではない点に留意が必要です。
リーマンショック時にはBBB(投資適格)以上の企業でもデフォルトしたケースが見られましたし、格付けはその時々の市況に応じて変動します。

このようなことから、格付けはあくまで信用リスクを計る物差しの一つと考え、格付けに頼りすぎない判断力を持つようにしましょう

③仕組債かそうでないか

仕組債は、通常の債券と違い条件次第で元本が減額される特殊な商品です。

仕組債の発行体以外の予め決められた個別株や株価指数が、一定の価格帯を上回ると期間より早く償還されたり、下回ると償還日に元本割れを起こしたりといった「仕組み(デリバティブ)」が組込まれています。

一般の債券に比べて利率が高く設定されているものの、前述のような条件が発生すると大幅な元本割れを起こすことから、期待していた「債券」と異なるということで、昨今トラブルも増えています。
すなわち仕組債は、利率よりも利回りが大きく下回る可能性のある商品といえます。

仕組債は、正しい理解なしでは大きな損失につながる危険性があるので、ハイリスク・ハイリターンな商品であることを理解し、自分の投資目的に合っているかを検討した上で、購入すべきかを判断しましょう。

④劣後債かそうでないか

劣後債は、企業が発行する社債のうち、普通社債と比較して弁済順位(デフォルト発生時の元本や利息の返済順位)が低い社債です。
株式と比較すると優先して支払われるため、劣後債は普通社債と株式の中間的特徴を持ち合わせています

劣後債は普通社債と比べてリスクが高いため、利率は普通社債より高いものが多くなっています。劣後債についても、デフォルトを起こした際には、利率よりも利回りが下回る可能性があります
利率重視で選んだ結果、劣後債と気づかず購入することがないよう、きちんとリスク・リターンを理解しておきましょう。

⑤期限前償還条項の有無

発行体による期限前償還条項の付いた債券(コーラブル債)は、発行体に権利を行使されると繰上償還されてしまい、償還日までの利息を受け取れなくなります

その代わり、その他の条件が同じ債券よりも高い利率になっているのが一般的です。
コーラブル債の場合、繰上償還日はいつかを事前に把握しておき、繰上償還された場合の利回りも考慮した上で、購入判断を行いましょう。

なお、投資家による期限前償還条項の付いた債券(プッタブル債)も存在します。こちらはコーラブル債と反対に投資家にとって有利な条件であるため、その他の条件が同じ債券よりも低い利率になっているのが一般的です。

債券について理解し無理のない資産運用を

債券は、決まった期間で決まった利息が付与されるインカムゲイン型の商品であることから、分散投資先としてポートフォリオに組込みたいと考える方は少なくないでしょう。
本記事では、債券の利率と利回りの違い、購入の際に確認すべき点をお伝えしましたが、これらはほんの一部の知識にすぎません。
ぜひこの機会に、さらに債券について理解を深め、無理のない資産運用を目指してください。

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