直接金融のSDGs私募債――寄付型から内容型へ

公開日:2022年12月29日
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お読みいただきありがとうございます。
Siiibo証券という会社でCEOを務めている小村と申します。

Siiibo証券は、「webでの私募」を活用することで、シンプルで分かりやすい金融商品である「社債」の投資・発行プラットフォームを運営するネット証券会社(第一種金融商品取引業者)です。

今回の記事では、主に公募や銀行引受の形態で興隆している本邦SDGs債に関し「直接市場の私募社債だと新たに何ができるか」について考えてみます。

上場未上場問わず、発行企業候補のお客様とのご面談の中で「事業構造の転換」「人材・ブランド戦略」「企業の社会的責任(CSR)に関する情報開示」等の観点にて頻繁に話題となるテーマです。

自社でも活用できないか等のお問い合わせがございましたら、是非こちらからご連絡をお願いいたします!

SDGsは全ての企業に関連

SDGs(Sustainable Development Goals)とは、国連にて採択された世界共通の「持続可能な開発目標」のことです。
相互に関連し合う17の目標、それを実現するための169のターゲット232の指標から構成され、地球上の「誰一人取り残さない(leave no one behind)」ことを基本理念としています。

このSDGsへの取り組みが遅れることは、非上場企業や中小企業においても、事業継続のリスクとなると考えます。ステークホルダーの動きという視点から、その要因を3つ例示いたします。

1. 「CSR調達」等、取引先選別・与信評価基準の変化

「CSR調達」は、取引先を選ぶ際の基準として、価格や機能だけでなくCSR(Corporative Social Responsibility:企業の社会的責任)に関する情報開示も評価に含める調達方法を指します。
主に大企業にて、「ESG投資」の流れを受けた機関投資家やNGOの株主提案等を背景に、サプライチェーンマネジメントにCSR調達を取り入れる動きが加速しております。
また、この動きは金融機関における与信評価にも見られ、2019年の金融検査マニュアル廃止後より、従来の事業審査・企業審査に加え、エリア審査(内部統制状況、ステークホルダー・地域社会への貢献度など)等との新たな合算評価へシフトしていくものと考えられます。

2. 若年層を中心とした人材市場における関心の高まり

ミレニアル世代やZ世代といった若年層では特にSDGsへの関心が高く、その取り組みは採用における会社のアピールポイントとなり、既存社員のモチベーション向上にも繋がります。
17の目標のうち以下は特に採用ブランディングに直結し、昨今の人材市場において高い関心を集めるテーマと言えます。

・ジェンダー平等を実現しよう/人や国の不平等をなくそう
  ⇒ D&I(Diversity and Inclusion)の推進
・働きがいも経済成長も:
  ⇒ 能力開発機会や安心・安全な労働環境の提供
・すべての人に健康と福祉を:
  ⇒ 心身両面の健康経営

3. 「ソーシャルビジネス化」「地方創生SDGs」等、新市場の拡大

SDGsに包含される社会課題は、例えば石油の精製・小売業者の再生可能エネルギー事業へのシフト、食品小売事業者の脱プラスチックに向けた先行投資など、持続可能な経営を目指す重要な契機となります。
また、社会課題の解決に目を向けた「ソーシャルビジネス化」による新規事業も盛んで、新たな市場を創出しつつあります(例:農福連携、エシカル消費)。特に中堅・中小企業においては、こうしたビジネスに特化したスタートアップとのオープンイノベーション・資本提携等の取り組みを通じ、外部の優秀な人的資源や知見を活用したり、社内の人材育成・非連続成長の事業領域確保につなげる例も見られます。
地方においては、「地方創生SDGs」を柱に自治体を中心とした官民連携が進んでおり、「SDGs未来都市」や「自治体SDGsモデル事業」の選定先事例などで見られる通り、ジョイントベンチャー設立や条例制定に至るケースもあります。

本邦の取り組みと「寄付型」の課題

公募市場においては、2020年にはSDGs債の件数・発行額それぞれ、146件・2兆1339億円に上り、グリーンボンド・ソーシャルボンド・サステナビリティボンドという3領域全てが急速に拡大しております。一方で、追加のレポーティングや外部機関評価のコストを主に発行体が負担している(投資家のネガティブ・プレミアムが小さい)現状等、課題も残されております。

銀行業界においても、いち早く多くの取り組みがなされております。
一部SDGsをテーマにしたファンド設立によるリスクマネー供給やビジネスマッチング等も見られる一方で、多くは発行額の一定割合を指定団体等に寄付・寄贈する、所謂「寄付型」の私募債発行となっております。
これらは、寄付・寄贈を通じてSDGsに貢献することを主眼としており、必ずしも資金使途自体はSDGsと関連しておりません。
持続可能な経営を目指した各企業の事業構造転換等のための資金供給となる、所謂「内容型」のSDGs私募債は未だ発展途上と言えます。

直接金融の得意分野、「内容型」

ESG投資は従来、株式投資におけるネガティブ・スクリーニングの位置付けで主に用いられてきました。しかし、金融・資本市場中心の課題共有という段階から、SDGsという共通言語により、企業の事業活動全般にその考えが取り込まれる段階に進む今こそ、直接金融における債券を用いることに意義があると考えます。

債券は発行市場が中心であり、投資家にとって資金が直接発行企業に渡る投資となることから、取り組み内容が実感しやすく、投資の意思決定にも反映されやすいと言えます。また上記に加え、年限を始めとする各債券の設計が資金使途と結びついていること等からも、資金調達とその使途・効果の対応関係をクリアに示しやすいという利点があります。

直接金融では、従来の金融機関の与信評価の延長上に無い、新たな取り組みを評価し柔軟にリスクマネー供給が可能という利点があります。
資金使途がオープンイノベーションにおける資本業務提携等の有価証券取得を伴う場合や、無形資産の増加に繋がる場合などは、特にこの利点が活かせると考えます。

公募債の発行が難しい非上場企業や中小企業においても、例えば以下のような資金使途では、直接金融による「内容型」SDGs私募社債による資金調達が適していると考えます。

  • 労働環境改善のための労務・進捗管理システム導入福利厚生への投資
  • 脱石油系新素材再生可能エネルギーへの転換・研究開発費
  • スタートアップや同地域企業とのJV・ブランド立ち上げ等に関連する資金
  • 従来取り残されていた方の就労を促進する環境整備や新規事業資金
  • 健康や環境に配慮した新商品・サービスの認知を広めるための広告宣伝費その他運転資金

おわりに

まさに今が、地域延いては社会全体が今後数百年、数千年単位で存続・発展し続けられるかを決めるターニングポイントとなり得る、またそれを目指すべきであると考えます。
不可逆的なこのプロジェクトに対し、一人の経営者として、また地方出身者という立場からも、何が出きるかを自問し続けたいとも考えます。

重ねてのご案内になりますが、自社でもSDGs私募社債を活用できないか等のお問い合わせがございましたら、是非こちらからご連絡をお願いいたします。

以上、拙文で大変恐縮ですが、皆様からのご意見やご指摘を取り入れ、より良い記事にしてまいりたく存じます。
是非お気づきの点ございましたら、私のTwitterアカウント等までご連絡いただけますと幸いです。

よろしくお願いいたします!
小村


以下、参考にさせていただいた書籍です。

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