設立5周年記念座談会 「株主と振り返る社債市場の歩み」前編
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Siiibo証券株式会社は2019年の設立から5周年、商号変更から3周年を迎えました。
一種業登録、サービスローンチを経て、1,500名を超える投資家ユーザ様と、スタートアップから上場企業まで幅広い発行企業を抱えるプラットフォームに成長してきた弊社事業。これまで支えてくださった株主であり役員でもある3名に、5年間の成長や変化について客観的な視点で語っていただきました。
前編では、Siiibo証券への出資の決め手、発行企業と投資家それぞれの視点から見たSiiibo証券についてお伝えします。
・石井 貴基 千葉道場株式会社 代表取締役
株式会社リクルート、ソニー生命保険株式会社を経て、株式会社葵を創業し、誰でも無料で学べるオンライン学習塾アオイゼミをリリース。Z会グループにM&Aを実施以降もグループ各社と複数の共同事業を開発。2019年3月末に退職。同年千葉道場ファンド設立より参加。2024年より同社代表取締役 ジェネラル・パートナー就任。
・髙岡 美緒 DNX Ventures パートナー
外資系証券会社勤務後、マネックスグループ執行役員として戦略的M&A、新規事業開発などを担当。ヘルステックスタートアップCFOなどを経て、2021年よりDNX ベンチャーズ パートナー。英ケンブリッジ大学自然科学部卒業。
・河西 佑太郎 Angel Bridge株式会社 代表パートナー
ゴールドマン・サックス証券投資銀行部門、ベインキャピタル、ユニゾン・キャピタルを経て2015年Angel Bridgeを設立し、現在に至る。 東京大学大学院農学系研究科修士修了(遺伝子工学)、シカゴ大学MBA修了。
・小村 和輝 Siiibo証券株式会社 代表取締役CEO
ドイツ証券株式会社にてトレーダーとして国内外の社債、CDS、仕組債等のクレジット商品全般の取り扱いを経験。ブラックロック・ジャパン株式会社にて、国内の運用会社・公的金融機関に向けたリスク分析及び投資プロセスのアドバイザリー業務に従事した後、株式会社Siiiboを設立、代表取締役CEO就任。東京大学大学院工学系研究科修了(鳥海研究室)。
Siiibo証券との出会い、投資の決め手「投資ニーズに応える唯一の商品と、金融業をやり切る胆力」
小村:まずは、Siiibo証券との出会いや当時印象に残っているエピソードがあれば、教えていただけますか?
特に千葉道場の石井さんからご出資いただいたのは証券会社の事業として必要な認可である第一種金融商品取引業の登録前で、長い道のりを経てやっとサービス開始のスタートラインに立てたタイミングでもありました。当時の心境はいかがでしたか?
石井:投資させてもらったのは2020年3月で、業登録には数カ月を想定していたのですが、実際はコロナ禍によって審査機関側にも影響があり、実に1年ほどかかりましたよね。スタートアップが予定通りいかないのは世の常ですが、まさにでしたね。
そういった状況でも経営陣がきちんと前を見て、しっかりとできる範囲で取り組んでらっしゃるのが伝わってきました。業登録が完了したときは、「ようやくですね」 と、私自身も嬉しかったです。
髙岡:私が投資を決めたポイントは3つあります。
1つ目は市場性です。一個人投資家として、利息がつく預金に代替するような投資商品で、仕組債のような複雑さがない商品があれば良いなと考えていました。発行企業(起業家)側にとっても、エクイティ調達と銀行介入以外の資金調達手段があれば良いのに、と考えていました。
2つ目は経営陣にマーケットフィットを感じたことです。この領域は業界をしっかりと理解し、戦略を実行できる人でないと難しいと思いますが、小村さんを始めとするSiiibo証券チームならそれができるのでは、と感じました。
3つ目はタイミングで、ちょうどクラウドファンディングなど新しい投資商品の認知や、ベンチャーや上場企業に対する理解も出てきている中で、社債という新たな投資・資金調達手段も普及できるタイミングなのではないかと考えました。
河西:私も、髙岡さんに重なるところがあります。
まずは私募社債という商品をとても面白いと感じましたし、個人投資家に強いニーズがあると思いました。
次に経営陣です。小村さん宮崎さん松澤さん、3名の取締役がこれまでのキャリアで各自やりきってこられた方々だと感じ、このチームであれば応援したいと思いました。
特に第一種金融商品取引業の登録をやりきった事はやはり大きかったですね。業登録には膨大な手続きだけでなく、数億円規模の資金の用意と、登録要件を満たす人員採用も10名近く必要になります。それを完了したという結果はもちろん、サービス開始前の売上がまだ無い状況下でその大変な過程をしっかりと乗り越えたというところにやりきる力を感じたのが、最後の決め手になりました。
ベンチャーデット市場と、発行企業から見たSiiibo証券「銀行が担えない資金調達を果たす」
小村:ありがとうございます。ここからは発行企業さん側の視点でお話をお伺いします。
2022年後半ごろから「ベンチャーデット」に注目が集まり、弊社でもスタートアップからの引き合いが非常に増えました。
スタートアップ企業の資金調達手段の多角化は当時と比較すると進んできたように感じますが、客観的にご覧になって、Siiibo証券がデット提供者の中でどうか、という点を伺えますか?
石井:今まさに金利が上昇局面に入りつつあり、ポテンシャルは今後も大いにあるのではないかと感じます。
ベンチャーデットの主たるプレイヤーはやはり銀行ですが、銀行だけでこの市場を受け止めるにはちょっと早い気がします。銀行が引き受けきれない部分をSiiibo証券が埋める役割を果たせる可能性は非常にあると思います。
1案件あたりの社債発行額も大きくなりましたよね。当初は5,000万円でも大きく感じましたが、この数年で億を目指せる環境が整えられた(※1)。これはとても大きい進捗だと思います。今ベンチャーデットで1億円提供できる銀行以外のプレイヤーはそんなに多くありません。重要な役割を担っていると思います。
(※1)実際の発行条件は弊社所定の審査を受けて決定する
髙岡:ベンチャーデット市場自体が、大きく拡大しましたよね。現在の市場規模はエクイティ調達額の約1/4程。メインプレイヤーには石井さんが述べられた銀行という存在がありますが、様々な理由で銀行の審査を通過できないケースはどうしてもあります。審査基準に満たなかった企業に別の調達手段を提供するというのは、大きな価値提供ではないかと思います。
河西:私はSiiibo証券で社債を発行した医療系企業の取締役も兼務していて、発行企業視点の声も直接聞いているのですが、発行企業にとってもSiiibo証券のサービスはとても良い機会になっています。
その企業は上場経験もある者がCFOを務めており、エクイティ調達や銀行借入はもちろん、資金調達手段が多様化する中でSiiibo証券の社債による資金調達を選択しました。
その会社はC向けにサービスも展開しており、そのような企業にとって、個人投資家に向けたアプローチは、企業のファン作りにも繋がります。私募社債による社債発行がIR広報手段にもなる、というのは、一つの価値ではないでしょうか。
小村:医療系企業が取り組まれている社会課題には投資家様からの関心も高く、応援目的も含む投資のお声が多かった印象です。
河西:個人の投資家と企業が直接繋がれる機会はなかなか無いので、特にC向けの展開をお考えの企業にとっては良いですよね。
石井:確かに、サブスクでレジャー施設を手掛けている発行企業さんも、相性が良かったですよね。
投資家視点で見るSiiibo証券「損失と利益のバランスがいい、自分たちが買いたい商品」
小村:ありがとうございます。
ここからは、投資家ユーザの視点で、お話を伺ってまいります。
プライベートデット市場は米国では個人投資家の参入が顕著です。日本においても、2022年7月にJ-Ships制度ができ、Siiibo証券では、日本で初めて(※2)未上場企業の転換社債の取扱いを取り扱いました。
昨年(2023年)末からは、同じく日本で初めての私募社債セカンダリーサービス(※3)も開始し、この新しい市場を何とか作っていきたいと取り組んでいます。
投資機会の広がりや将来性について、お考えをお聞かせいただけますか?
石井:市場の波(※4)は来ていて、投資家の方がいわゆる債券投資に目を向けるタイミングも来つつあると思います。Siiibo証券としてできることは、そこをきちんと捉えて環境を整えていくことですよね。
政府から 「スタートアップ育成5か年計画」 も出されましたし、今後マーケティングをしやすくなっていくのではないかと期待しています。
利用された投資家ユーザのリピート購入率の高さからも、顧客満足度が高いことも伺えます。投資家にとって良い投資機会と、資金ニーズがある企業にとって貴重な調達手段を繋げるプラットフォームを提供できている、と考えて良いのではないかと思います。
(※2)(※3)2024年9月2日Siiibo証券調べ
(※4)2024年8月5日に日経平均株価が最高下落幅を記録した
小村:投資家様の満足度という点では、実際にSiiibo証券で投資された経験を基に、サービスの面白みや魅力を、投資家目線で長文のブログにまとめて発信されている方等もいらっしゃるんです。まだニッチではありますが、創業当時に思い描いたサービスを理解してくださったロイヤルカスタマーが着々と根付いてくださっている事を、私としても大変嬉しく思っています。
髙岡:Siiibo証券への投資を始めた2021年当時は、ここまでマクロ環境が整うとは想像していませんでした。スタートアップ育成5か年計画の発表など、様々な事が好転していますよね。
当時はインフレなんて誰も考えていませんでしたが、これまで日本の銀行に眠っていた1,000兆円規模の預金を始めとした金融資産が、今動き始めたところです。銀行預金が中心だった資産は株や投資に入れるには心理的ハードルが高いですが、債券であれば日々の価格変動に振り回されることなく安定した収益を目指すことができ、日本人の性質と相性が良いのではないか、と思っています。
その他にも、エクイティキッカー(新株予約権)が入っているものであれば未上場株のアップサイドを取る事もできます。この投資機会は個人投資家にとってなかなか貴重なものではないでしょうか。
Siiibo証券で扱っている社債は、私自身も投資したいと思うものがあります。ですが役員自身は投資できないので残念です。
小村:実は社内の役職員も同じことを考えておりまして、自分達で扱いながら「これ買いたいな」と思う事があります。買えないんですけどね。
髙岡:買えないのは残念ですが、自分でも欲しいと思えるような商品を提供できている事は役員として誇りですね。
河西:私自身はアメリカの社債に投資していて、アメリカではトリプルBで投資適格でも、ハイレバレッジというだけで金利5%後半という銘柄が複数あるんです。魅力的ですが、どうしても為替リスクがついてきます。為替リスクを避けるために、円建てである程度高利回りのアセットを探すと、高配当のエクイティ、REITなどが定番です。利回りも悪くはないのですが、株なので価格変動リスクがあり、簿価割れのリスクが常に付きまとってしまいます。
値動きに左右されにくい社債の中で利回りを求めると、人気の銘柄でも金利は2~3%。
そういった市場環境の中でSiiibo証券が提供しているものは、社債なのでインカムゲインがメインです
ベンチャーデットなので大企業の社債と比較するとリスクは高いかもしれませんが、その分5-6%の金利がある投資商品となれば、かなり魅力的な投資機会だと思います。そこにさらにCB(転換社債)でストックオプションがつく商品があれば、ダウンサイドをプロテクトしつつ、アップサイドも狙うことができます。このような機会は他にないですよね。
小村:ありがとうございます。実は色々な投資家ユーザ様にお話を伺うと、今のお話の通りにSiiibo証券での投資のご検討・意思決定に至っているケースがよく挙がります。
円とドルで予算を分け、円の中で一定割合をインカムゲイン型投資に向けようとされるのですが、選択肢がなかなか無い。そんな中でSiiibo証券を見つけてくださって、ご利用いただいている方々は多くいらっしゃいます。
河西:ええ、投資家目線で、社債は損失のリスクを抑えつつ、利益も見込める運用ができる点が魅力的だなと考えています。
後編では、サービス開始後3年間のSiiibo証券の成長や変化と、今後についてお伝えします。
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