債券の種類とは?発行体、利息、発行地域、発行時期、性質などによる債券の分類と性質

公開日:2023年8月25日
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債券と聞いてまず「国債」が思い浮かぶ方は少なくないでしょう。国債は国が発行する債券で、発行体に着目した債券の種類のひとつです。つまり、他の主体が発行する種類の債券も存在しています。
また、発行体だけでなく、利息の支払われ方、発行される地域や発行時期で分ける方法もあります。更に、金融商品としての性質の違いによって、債券の種類を分類することもできます。

今回の記事では、債券の様々な分類方法に着目し、それぞれの債券の特徴について解説します。

発行体で分けた債券の種類

債券の信用リスクを判断する際には、発行体の財務安定性が重要な指標となります。まずは発行体という観点から債券を分類し、それぞれの仕組みや特徴、代表例について見ていきましょう。

国や地方公共団体が発行する公共債

公共債とは、国や地方自治体、政府機関といった公的な組織が発行する債券を指します。例として、国が発行する「国債」や、地方自治体が発行する「地方債」などがあります。

発行主体が公共機関であるため、公共債は一般的に債務不履行(デフォルト)となる確率が低いとされ、その信用力と安定性が高く評価されます。しかし、他の債券と同じく全くリスクがない訳ではありませんので、投資の際にはしっかりと検討を行いましょう。

企業や金融機関が発行する民間債

民間債とは、一般の事業会社や金融機関などの民間企業が発行する債券です。例を挙げると一般的な株式会社などによる「社債」、金融機関による「金融債」、電力会社による「電力債」などがあります。

中でも社債は、発行体となる企業によって信用力や利回りが大きく異なります。一般的に、信用力が高い(信用リスクが低い)ほど利率は低く設定されます。
なお、利回りと利率の違いについてはこちらの記事も参照してください。

利息の支払い方法で分けた債券の種類

次に、利息という観点から債券を種類分けしてみましょう。債券の多くは利息が付く「利付債」として発行されますが、「割引債」というものも存在します。それでは、「利付債」と「割引債」のそれぞれの特性と仕組みについて詳しく見ていきましょう。

利付債

利付債(りつきさい)は、一般的な債券の形態であり、定期的(例:半年ごと、1年ごと)に利息が支払われ、満期時に額面金額で元金が返済(償還)されます。
さらに、利付債は利率の観点から、「固定利付債」と「変動利付債」の2種類に分けられます。

  • 固定利付債
    固定利付債(または確定利付債)は債券の最も基本的な形態です。利率は債券が発行された時点から償還まで一定で、所定の利息が定期的に支払われます。債務不履行が発生しない限り、利息は当初の予定通り支払われるため、経済的な見通しを立てやすいというメリットがあります。

  • 変動利付債
    変動利付債は、利率が市場金利に合わせて変動するという特性を持つ債券です。景気が良く金利上昇の傾向が見られる時期には、投資者はより多くの利息を受け取れる可能性が高くなりますが、反対に金利低下の時期には得られる利息も小さくなります。
    なお、「特定の日までは固定利率だが、以降は変動利率」、あるいは「発行時から変動利付債だが、基準金利に対する金利差が特定の日から変化」といった複雑な設計がされている債券もあります。

割引債

割引債(またはゼロクーポン債)は利付債と異なり、利息の支払いがなされません。その代わり、割引債の額面金額は発行価格よりも高く設定されており、満期時にはこの額面金額で償還されます。
つまり、償還される額面金額と購入金額(新規発行時に購入した場合は発行価格)との差分が利益となります。

国内における割引債の例としては、割引国債、国庫短期証券(※)、割引金融債などが挙げられます。

(※)一時的な資金不足を補うため、日本政府が発行する国債の一種

発行される地域で分けた債券の種類

現在日本国内で購入可能な債券の種類は多岐に渡ります。国内発行のものはもちろんのこと、米国をはじめとした先進国や、中南米、東欧、アフリカ、中国、インド、東南アジアなどの新興国といった、様々な地域から発行された債券も選択肢となりえます。

発行国や地域によって、債券の利回りやリスク、その他の特性は大きく異なるため、違いを理解することが重要です。

日本で発行される国内債券

国内債券とは、読んで字のごとく、日本国内で発行される債券を指します。国内債券には国債、地方債、日本企業が発行する社債などが含まれます。

国内債券の利点として、国内における流通量が多いため入手が比較的容易であること、また日本円で取引されるため為替変動によるリスクが生じないということが挙げられます。

一方で、外国債券と比べると利回りが低い傾向があります。

米国債や新興国のエマージング債券などの外国債券(外債)

外国債券(または外債) とは、発行体・発行市場・取引通貨のいずれかが外国であるものを指します。

例えば、発行体が日本企業であっても、国外で発行した債券は外債と呼ばれます。また、外国企業が日本国内市場向けに円建てで発行するサムライ債というものがありますが、発行体が国外であることから、外債扱いとなります。

発行体別の外債の代表例としては、米国債や、新興国の政府または企業が発行するエマージング債券などがあります。

外債を取引通貨で分類すると、日本円で発行する「円貨建て外債」や、外国通貨で発行する「外貨建て外債」、払込み・利払い・償還に二種類の通貨を併用する「二重通貨建て外債」があります。

外債は国内債券と比較すると、一般的に利回りが高い傾向にありますが、日本円に換金する際に為替差損が生じる恐れ(為替変動リスク)があります。
その他のリスクとして、当該国の政治的・経済的状況や、社会情勢、災害などにより、債券価格が大きく変動する可能性(カントリーリスク)もあります。

特にエマージング債券はカントリーリスクが高い傾向にあり、その分利回りも比較的高く設定されています。

したがって、外債を購入する際には、為替変動リスクやカントリーリスクを考慮した上で、自身のリスク許容度に合った債券を選ぶことが重要です。

発行時期で分けた債券の種類

債券は発行された時期によって、新発債と既発債に分類することができます。

新発債

新発債とは、新規に発行される債券を指します。具体的には、企業や政府が初めて債券を発行する場合や、追加の資金調達のため新たに発行する場合が該当します。
新発債の発行価格は予め決まっており、一定期間内に申込んだ投資家は全員同じ金額で購入できます。
また、新発債の利率も予め決まっており、最終利回りは表面利率と同じになります。すなわち、新発債を購入し償還まで保有し続けると、発行時の利率どおりの利息を受取ることができます。

既発債

既発債とは、既に発行され市場に流通している債券を指します。具体的には、過去に発行された新発債の以前の保有者が手放して、流通市場(セカンダリーマーケット)で取引されているものが該当します。新発債と異なり、購入可能な期間は限定されていないため、銘柄の選択肢が多くなっています

既発債の価格は、市場金利や発行体の信用力、需給バランスなどに応じて日々変動します。つまり、既発債はタイミングによって購入できる価格が異なる(時価) ことになります。

また、利付債の場合における既発債の売買の特徴として「経過利息」が発生する、という点があります。
受渡日(売買の決済をする日)がその債券の利払日と異なる場合には、買い手側が、売り手が保有していた日数に相当する分を日割り計算した利息額(経過利息)を売り手側に支払います。次回の利払日に支払われる利息は、買い手が全額受取れます。
すなわち、経過利息の支払いとは、売り手と買い手それぞれの保有期間に対して公平に利息を得られるよう、事前に立替払いを行っているといえます。
以上より、既発債を購入する際には、債券の時価と経過利息分の合計金額の支払いが必要ですので、投資判断時に考慮漏れのないよう留意しましょう。

債券以外の金融商品の性質も併せ持つ債券の種類

最後に、特殊な金融商品としての性質を持つ債券について解説します。これらの債券は一般的な債券よりも条件が複雑になる分、固有のメリットもあり、ポートフォリオ全体のリスク・リターン調整を柔軟に行うための分散投資の選択肢となる点が魅力といえます。
それぞれの仕組みやリスクをしっかりと理解した上で、自身のニーズに合った債券を選ぶようにしましょう。

株式に転換できる転換社債

転換社債(正式には、転換社債型新株予約付社債) は、特定の期間(転換請求期間)内の任意のタイミングで株式に転換可能な社債です。「Convertible Bond」の頭文字から「CB」と呼ばれることも一般的です。

転換社債は社債に新株予約権が付与された金融商品で、両者を分離することはできなくなっています。新株予約権を行使して株式を取得する際には、行使金額を払込む代わりに、社債で現物出資(代用払込み)することから、社債と引替えに株式を取得できるということで「株式転換」と呼ばれます。すなわち株式転換後は、株式のみが残ることになります。

転換社債にも通常の債券と同様に、利率や償還期限が定められており、株式転換(転換しない場合は満期償還)までの期間分の利息収入を得ることができます。

転換社債の大きな特徴は、株式転換の際に、予め設定された転換価格で株式を取得できるという点です。つまり、転換社債購入後、株価が上昇したタイミングで株式に転換、売却することによって、売買差益を得られます。

また、転換社債自体を売却することも可能です。発行体の株価と転換社債の価格はある程度連動する傾向にありますが、株価が下落した場合には、債券としての性質部分の価値から、転換社債の価格は大きな値崩れが起きにくくなっています

以上の特性から、転換社債は債券の安定性と株式の投資性を併せ持つ金融商品といえます。転換社債の主な留意点として、以下の2つが挙げられます。

まず、転換社債は一般的な社債に比べて利率が低い場合があり、中には利息のないもの(ゼロクーポン)も存在します。ゼロクーポンの場合、前述の割引債同様に、発行価格よりも額面金額が高く設定されますが、結果的に普通社債の方が最終利回りが良くなるケースも起こり得る点に留意しましょう。

また、転換社債投資では、一般的な債券投資のリスクに加え、株価の変動状況によっては、株式転換後に売却しても、転換社債として売却しても、いずれにしても利益が得られない可能性もありますので、注意が必要です。

一定の条件で株式を購入できるワラント債

ワラント債とは、発行体の株式を事前に設定された価格(行使価格)で購入する権利(新株予約権、ワラント)が付与された社債を指します。

ワラント債のうち、社債部分と新株予約権部分を別々に売買できないものを、正式には「非分離型新株予約権付社債」と呼びます。対する「分離型ワラント債」も存在していますが、2002年の商法改正により、分離型ワラント債は社債と新株予約権の同時発行であり、新株予約権付社債の定義には該当しないものとされています。

ワラント債も新株予約権を行使することで株式を得られる、という点では転換社債に類似しますが、転換社債と異なり株式を購入するための金銭(行使価格)の払込みが別途必要となります。つまり、ワラント債の場合は株式を購入した後も、社債部分を残しておくことができます

転換社債と同様に、ワラント債の利率は一般的な債券より低めとなりますが、将来的に株価が上昇すると予想される企業のワラント債を購入することで、株式の売買差益を得られる可能性があります。

弁済順位が低い代わりに利率の高い劣後債

劣後債とは、債務の弁済順位が低い(劣後する)債券を指します。

例えば経営破綻といった、債券の発行要項内「劣後特約」で「劣後事由」として定められた状況が発生すると、元利金をはじめとする債務を発行体が全額支払うことは不可能となります。このとき、劣後債の保有者に対しては、優先債務が全て弁済されるまで、残余財産の分配はなされません

劣後債は普通社債と比べたリスクの高さから、利回りが高めになるよう条件設計されます。

劣後債の弁済順位は社債と株式の間に位置付けられ、価格変動リスクが社債よりも大きいことから、劣後債は株式に近い性質を持つ「ハイブリッド証券」とも呼ばれています。

デリバティブを組込んだ仕組債

仕組債は、一般的な債券にはない特別な「仕組み」を組込んだ債券です。スワップ(※1)やオプション(※2)などのデリバディブ(金融派生商品) を利用することで、満期や金利、償還金額などを、一般的な債券よりも自由度が高く条件設定できる点が大きな特徴です。

仕組債の一例としては「EB債」(他社株転換可能債券)が挙げられます。EB債は、参照銘柄(他社株)の価格変動によって条件が変わり、償還日が前倒しになったり、償還日に金銭ではなく他社の株式が交付されたりする、という特性を持っています。EB債は仕組債の中でも「複雑な仕組債」に分類され、一般的な債券よりも複雑かつ多くのリスクを把握しておく必要があります。

仕組債の利率は一般的な債券よりも高く設定される場合がほとんどですが、購入時点の市況によっては投資家にとって不利な条件になっていることもあり、実際の利回りが高いとは限りません

「複雑な仕組債」に関する不適切な販売事例が問題となったことから、2023年より新たな販売ルールが適用され、一般販売を自主的に取りやめる証券会社も出ています。

ただし、仕組債は一般的な債券より高リスクでありながら、投資の柔軟性が高いため、許容リスクに合わせたオーダーメイド型の仕組債を大口で購入可能な経験豊富な投資家や富裕層には好まれる傾向があります。

(※1)金利(固定金利と変動金利)や通貨(円と外貨)を交換する取引
(※2)予め約束した価格で、将来に売ったり買ったりできる権利

状況に応じて自分に合った種類の債券に投資を

本記事では、様々な観点で分類される債券の種類とそれぞれの特徴について解説しました。同じ債券の一種でも、種類別に固有のメリット・デメリットが存在します。

また、債券はあくまで投資商品であり、一定のリスクを必ず伴います。信用力の高い発行体の債券であっても、必ずしも元本が保証がされているわけではないという点も理解しておく必要があります。

それぞれの債券が持つ特性やリスクを理解した上で、自身の投資目的やリスク許容度に合った債券投資を行いましょう。

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